阿片王―満州の夜と霧 (新潮文庫)
カスタマーレビュー
おすすめ度:
基本的に事実として間違っている記述が多い
(2008-11-28)
まったく評価できない。自信満々に書いている断定的記述に客観的な事実として間違った点が多い。例えば辻政信がノモンハンやガダルカナル、インパール作戦を指揮した・・・うんぬんの記述があるが、辻はインパールとは無関係だ。昭和通商が公的文書に一切出てこないという記述についても、「あるよ」と言っておこう。また、ソ連侵攻のさいに関東軍は12トンの阿片を日本国内に運び込もうとしたがGHQの知るところrとなり・・・うんぬんの記述については、歴史を語る資格さえない。ソ連侵攻は1945年の8月、GHQは戦後の日本統治のための連合国の組織だから、錯誤として済ますにしてもあまりにお粗末極まりない。40ページで読むのを止めた。これ以上読み続ける価値がない。歴史の迷路ではなく、書き手の中の迷路をともに彷徨いたい暇な人にお勧め。
文章と作者の姿勢に疑問
(2008-10-30)
まず文章がヒドい。「耳が勃起する」という表現が出てくる。読んでいるこちらが恥ずかしくなるほど劣悪な比喩である。これだけでも読む気を失ってしまう。 さらに、「夜の帝王」「男装の麗人」といった人物形容がやたらと出てくることが気になる。陳腐な比喩が使われる度に人物像が薄っぺらになっていく。 表現だけでなく構成もよくない。3章になってようやく里見の物語が始まるのは回り道しすぎだと思う。 取材過程を見せることがこの作者のスタイルだが、そこでも寄り道のし過ぎがある。例えば五味川純平などはまったく関係ない訳だ。 そして文章以上に批判すべきは、作者の姿勢だ。 登場人物を「畜生」「怪物」「人倫にもとる」などと批判する。 その批判する姿勢には一点の疑いもない。 里見たち登場人物の人間性を否定すればするほど、著者や読者を含む一般人とは違う特異な人間であることが強調され、『阿片王』で扱われる歴史に普遍性がなくなっていく。 これが、この作品の決定的なキズである。
満州というあまりにも深すぎる闇
(2008-10-13)
戦前・戦中の満州で「阿片王」と呼ばれるほどの活躍を見せながら、その正体が多くの謎に包まれている里見甫の実像に迫ろうとする意欲的な一冊。
周到な文献・資料調査と徹底した関係者へのインタビューによって、里見(と彼を取り巻く謎の女たち)の実像にひたひたと迫ってゆくのだが、それらをもってしても核心を突くまでには至らなかったのではないかという印象を受けた。そうならざるを得なかった理由として、以下の3点を挙げることができるだろう。第一に、里見自身がまったく捉え所のないあまりにも不可思議な人物であった。第二に、戦費調達のための阿片売買という仕事の性格上、その内容を詳細に記した資料が存在しない上に、本人も中国大陸での仕事については多くを語らなかった。第三に、生前の里見を直接知る人物はほとんど他界しているため、彼の大陸での暗躍についての証言を得ることが極めて困難である。
また、里見の実像に十分迫りきれなかったためか、本書の叙述も若干まとまりを欠いているように思える。仮説を提示し、それに対する答を追い求めていくというスタイルではなく、著者の取材の過程を読者に追体験させることを意図するような書きぶりになっているため、登場人物やその証言が前後に入り組んでいて、かなり読みにくくなってしまっている。
本書の構想があと数年早く出来ていたならば、内容も全く違うものになっていたかもしれない。時間の壁はあまりにも大きい。そして、戦争の記憶はどんどんと遠くなってゆく。
内容よりも・・・
(2008-09-29)
内容については、著者の思い込みや妄想の部分も感じさせない訳ではないが、
基本的に取材も丹念で信憑性が伺える。
しかし文章がくどい。
ある登場する女性のことを「男装の麗人」と表しているのだが、この表現が何度も
繰り返し登場したり、別の女性に対しても同じ「男装の麗人」と表現する。
派生的なエピソードが出てくると「これについては後で詳しく述べたい」と
何度も同じいい回しで文章を締める。
こういった文章力というか、ボキャブラリーのなさが読み手に負担をかける本である。
過ぎていく時、去っていく人々
(2008-09-21)
気になる本が文庫化されたのですぐに購入して読了した。以下三点が感想である。
一点目。主人公の里見という方が 結局どのようなアヘン取引をしたのかは本書では解明されていない。おそらく これが本書に対する一番シンプルな批判になるような気がする。
但し そもそも戦前の話という遠い昔のことである点だけではなく 間違いなく 当時の軍隊、関係者、GHQまで含めたすべての人が 隠匿し抹消しようとしてきた「陰の歴史」である。その点はきちんと理解してあげないと 労作に挑んだ著者へアンフェアーになると僕は思う。戦前の満州で国策として行われたアヘン取引の全容が解明される可能性は 将来に渡って非常に低いと僕は思う。
二点目。佐野の執念の取材はよく伝わってきた。実際本書は 里見という人を描き出すというよりは 佐野がどのように関係者を見つけていくかという点で非常にスリリングである。読んでいると 佐野が感じたであろう足の痛みなどが伝わってくる。
三点目。関係者がどんどん物故していく姿に感銘を受けた。一時期 特定の場所で活躍した人も 必ず死んでいく姿を描く佐野の筆致には どこか無常観が漂う。貴重な証言者を失っていく佐野の無念と諦念こそが 本書の底辺を流れる通奏低音だ。時がすぎ去ることの 残酷さと 時が物事を浄化していく様をひしひしと感じた。
おすすめ度:
基本的に事実として間違っている記述が多い
まったく評価できない。自信満々に書いている断定的記述に客観的な事実として間違った点が多い。例えば辻政信がノモンハンやガダルカナル、インパール作戦を指揮した・・・うんぬんの記述があるが、辻はインパールとは無関係だ。昭和通商が公的文書に一切出てこないという記述についても、「あるよ」と言っておこう。また、ソ連侵攻のさいに関東軍は12トンの阿片を日本国内に運び込もうとしたがGHQの知るところrとなり・・・うんぬんの記述については、歴史を語る資格さえない。ソ連侵攻は1945年の8月、GHQは戦後の日本統治のための連合国の組織だから、錯誤として済ますにしてもあまりにお粗末極まりない。40ページで読むのを止めた。これ以上読み続ける価値がない。歴史の迷路ではなく、書き手の中の迷路をともに彷徨いたい暇な人にお勧め。
文章と作者の姿勢に疑問
まず文章がヒドい。「耳が勃起する」という表現が出てくる。読んでいるこちらが恥ずかしくなるほど劣悪な比喩である。これだけでも読む気を失ってしまう。 さらに、「夜の帝王」「男装の麗人」といった人物形容がやたらと出てくることが気になる。陳腐な比喩が使われる度に人物像が薄っぺらになっていく。 表現だけでなく構成もよくない。3章になってようやく里見の物語が始まるのは回り道しすぎだと思う。 取材過程を見せることがこの作者のスタイルだが、そこでも寄り道のし過ぎがある。例えば五味川純平などはまったく関係ない訳だ。 そして文章以上に批判すべきは、作者の姿勢だ。 登場人物を「畜生」「怪物」「人倫にもとる」などと批判する。 その批判する姿勢には一点の疑いもない。 里見たち登場人物の人間性を否定すればするほど、著者や読者を含む一般人とは違う特異な人間であることが強調され、『阿片王』で扱われる歴史に普遍性がなくなっていく。 これが、この作品の決定的なキズである。
満州というあまりにも深すぎる闇
戦前・戦中の満州で「阿片王」と呼ばれるほどの活躍を見せながら、その正体が多くの謎に包まれている里見甫の実像に迫ろうとする意欲的な一冊。
周到な文献・資料調査と徹底した関係者へのインタビューによって、里見(と彼を取り巻く謎の女たち)の実像にひたひたと迫ってゆくのだが、それらをもってしても核心を突くまでには至らなかったのではないかという印象を受けた。そうならざるを得なかった理由として、以下の3点を挙げることができるだろう。第一に、里見自身がまったく捉え所のないあまりにも不可思議な人物であった。第二に、戦費調達のための阿片売買という仕事の性格上、その内容を詳細に記した資料が存在しない上に、本人も中国大陸での仕事については多くを語らなかった。第三に、生前の里見を直接知る人物はほとんど他界しているため、彼の大陸での暗躍についての証言を得ることが極めて困難である。
また、里見の実像に十分迫りきれなかったためか、本書の叙述も若干まとまりを欠いているように思える。仮説を提示し、それに対する答を追い求めていくというスタイルではなく、著者の取材の過程を読者に追体験させることを意図するような書きぶりになっているため、登場人物やその証言が前後に入り組んでいて、かなり読みにくくなってしまっている。
本書の構想があと数年早く出来ていたならば、内容も全く違うものになっていたかもしれない。時間の壁はあまりにも大きい。そして、戦争の記憶はどんどんと遠くなってゆく。
内容よりも・・・
内容については、著者の思い込みや妄想の部分も感じさせない訳ではないが、
基本的に取材も丹念で信憑性が伺える。
しかし文章がくどい。
ある登場する女性のことを「男装の麗人」と表しているのだが、この表現が何度も
繰り返し登場したり、別の女性に対しても同じ「男装の麗人」と表現する。
派生的なエピソードが出てくると「これについては後で詳しく述べたい」と
何度も同じいい回しで文章を締める。
こういった文章力というか、ボキャブラリーのなさが読み手に負担をかける本である。
過ぎていく時、去っていく人々
気になる本が文庫化されたのですぐに購入して読了した。以下三点が感想である。
一点目。主人公の里見という方が 結局どのようなアヘン取引をしたのかは本書では解明されていない。おそらく これが本書に対する一番シンプルな批判になるような気がする。
但し そもそも戦前の話という遠い昔のことである点だけではなく 間違いなく 当時の軍隊、関係者、GHQまで含めたすべての人が 隠匿し抹消しようとしてきた「陰の歴史」である。その点はきちんと理解してあげないと 労作に挑んだ著者へアンフェアーになると僕は思う。戦前の満州で国策として行われたアヘン取引の全容が解明される可能性は 将来に渡って非常に低いと僕は思う。
二点目。佐野の執念の取材はよく伝わってきた。実際本書は 里見という人を描き出すというよりは 佐野がどのように関係者を見つけていくかという点で非常にスリリングである。読んでいると 佐野が感じたであろう足の痛みなどが伝わってくる。
三点目。関係者がどんどん物故していく姿に感銘を受けた。一時期 特定の場所で活躍した人も 必ず死んでいく姿を描く佐野の筆致には どこか無常観が漂う。貴重な証言者を失っていく佐野の無念と諦念こそが 本書の底辺を流れる通奏低音だ。時がすぎ去ることの 残酷さと 時が物事を浄化していく様をひしひしと感じた。
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