丹生都比売
カスタマーレビュー
おすすめ度:
闇の中で銀を練る
(2008-05-03)
明るい太陽のもとを歩むことが似合う輝く人がいる。
他方で、闇の中にひっそりと光る魂を練り上げる人もいる。
月光に慰められ、星の光に導かれ、陽光に憧れながらも諦める人もいる。
梨木香歩の鋭敏な感覚は、闇に隠れて身を守る人の痛みを、静かに掬い取る。
壊れやすいものをそうっと取り上げ、美しいまま紙の上に広げてみせる。
草壁皇子という歴史上にひっそりと名前を残す子どもが主人公だ。
他の梨木作品と共通して、母と子の葛藤と和解が大きな主題である。
実の母親と、どうにも折り合いがつかないことがある。
愛している。愛されている。それなのに、埋め尽くせない、鬼の巣食う隙間ができる。
草壁皇子は、母親の多面性に戸惑いながら、引き受けていく。
よい母でも、悪い母でもなく、その両方を持つ母親という世界を、我が身を賭して受け容れる。
もはやまったき母親はいないという諦念の哀しみだけが残されるとしても、おそらく哀しみだけが憎悪や怨恨を乗り越える力を持つのだ。
美しくも切ない物語だった。
草壁皇子の心の内を描いた秀作
(2007-03-05)
天武天皇、持統天皇、大津皇子の名は知っていても、
草壁皇子のことはあまり知られていないかもしれません。
皇太子でありながら、天皇になることなく亡くなった草壁。
異母弟の大津がすばらしい人物と歴史書に記される中、
草壁については多くが語られていない。
そんな皇子を、梨木さんは優しく描いている。
異母弟や母、乳母を気遣うことができる心優しい少年。
政治的才能ではなく、人を思いやる心に恵まれた皇子。
自分が殺されるとわかっていても、悲しみを独りで胸に秘めた。
私の中で、草壁のイメージがしっとりと息づいている気がします。
梨木さん、すごい。
(2006-03-16)
実在の人物の人生を描く、これまでの梨木さんの
著書とは一味違う本書。
なんといいますか、こういう話、もっともっと読みたいけれど、
書けるのはきっと梨木さんだけだなぁと思ってしまいました。
少なくとも今は梨木さんだけ、だと思います。
透明な静けさを湛えた物語
(2004-07-08)
大海人皇子(おおあまおうじ)と大友皇子が、天智天皇崩御の後、皇位継承権を巡って戦った壬申の乱。話はその前年、671年の秋、大海人皇子を父に、鵜野讃良皇女(うののさららのひめみこ ※鵜の字が違ってますが)を母に持つ草壁皇子が、恐ろしい夢を見るところから始まります。
聞いたことある人名がたくさん
(2004-03-11)
持統天皇、天智天皇、草壁皇子、大津皇子、大海人皇子…。日本史で出てくる有名な人たちですよね。学生時代を終えてずいぶんたつので、久しぶりに出会った気がして懐かしかったです。
感情を抑えて、あっさりと書かれているので、物足りなさも残りました。兄弟の確執、我が子に対する親の思いなど、もっと知りたい!
おすすめ度:
闇の中で銀を練る
明るい太陽のもとを歩むことが似合う輝く人がいる。
他方で、闇の中にひっそりと光る魂を練り上げる人もいる。
月光に慰められ、星の光に導かれ、陽光に憧れながらも諦める人もいる。
梨木香歩の鋭敏な感覚は、闇に隠れて身を守る人の痛みを、静かに掬い取る。
壊れやすいものをそうっと取り上げ、美しいまま紙の上に広げてみせる。
草壁皇子という歴史上にひっそりと名前を残す子どもが主人公だ。
他の梨木作品と共通して、母と子の葛藤と和解が大きな主題である。
実の母親と、どうにも折り合いがつかないことがある。
愛している。愛されている。それなのに、埋め尽くせない、鬼の巣食う隙間ができる。
草壁皇子は、母親の多面性に戸惑いながら、引き受けていく。
よい母でも、悪い母でもなく、その両方を持つ母親という世界を、我が身を賭して受け容れる。
もはやまったき母親はいないという諦念の哀しみだけが残されるとしても、おそらく哀しみだけが憎悪や怨恨を乗り越える力を持つのだ。
美しくも切ない物語だった。
草壁皇子の心の内を描いた秀作
天武天皇、持統天皇、大津皇子の名は知っていても、
草壁皇子のことはあまり知られていないかもしれません。
皇太子でありながら、天皇になることなく亡くなった草壁。
異母弟の大津がすばらしい人物と歴史書に記される中、
草壁については多くが語られていない。
そんな皇子を、梨木さんは優しく描いている。
異母弟や母、乳母を気遣うことができる心優しい少年。
政治的才能ではなく、人を思いやる心に恵まれた皇子。
自分が殺されるとわかっていても、悲しみを独りで胸に秘めた。
私の中で、草壁のイメージがしっとりと息づいている気がします。
梨木さん、すごい。
実在の人物の人生を描く、これまでの梨木さんの
著書とは一味違う本書。
なんといいますか、こういう話、もっともっと読みたいけれど、
書けるのはきっと梨木さんだけだなぁと思ってしまいました。
少なくとも今は梨木さんだけ、だと思います。
透明な静けさを湛えた物語
大海人皇子(おおあまおうじ)と大友皇子が、天智天皇崩御の後、皇位継承権を巡って戦った壬申の乱。話はその前年、671年の秋、大海人皇子を父に、鵜野讃良皇女(うののさららのひめみこ ※鵜の字が違ってますが)を母に持つ草壁皇子が、恐ろしい夢を見るところから始まります。
不穏な空気が立ちこめる吉野の宮で、少年の草壁皇子は、キサと名づけた言葉の不自由な女の子と出会います。そして、草壁皇子はキサから、銀(しろがね)の光を放つ勾玉(まがたま)をもらうのですが……。
透明な静けさを帯びた空気の中で、草壁皇子の孤独な気持ちがひたひたと胸に迫ってきた物語でした。殊に、自分とは違う気質の母親、鵜野讃良皇女(後の持統天皇)に向けられた草壁皇子の眼差しに、哀しみと寂しさが湛えられていたところに、切ない気持ちにさせられました。
表題の「丹生都比売」(におつひめ)とは、水銀(みずがね)を産し、清らかな水が流れている吉野の地を統べているご神霊、姫神さまの名前です。
出版された梨木さんの作品としては、『西の魔女が死んだ』に続く二冊目になるのでしょうか。抹茶アイス色した本の装幀も素敵。でも、物語の色合いとしては、草壁皇子がキサからもらった勾玉の銀色、鏡のようなきらめきを放つその銀の色が心に残ります。
聞いたことある人名がたくさん
持統天皇、天智天皇、草壁皇子、大津皇子、大海人皇子…。日本史で出てくる有名な人たちですよね。学生時代を終えてずいぶんたつので、久しぶりに出会った気がして懐かしかったです。
感情を抑えて、あっさりと書かれているので、物足りなさも残りました。兄弟の確執、我が子に対する親の思いなど、もっと知りたい!
梨木さんの本はいくつか読みましたが、日本の歴史小説的ファンタジーは初めてです。他にもあるなら読んでみたいと思ったし、できればこの話の詳細版を出して欲しいとも思いました。
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